引き返す勇気
- 花田 明香
- 2020年7月12日
- 読了時間: 2分
更新日:2020年8月15日
パキスタンに、トランゴ・タワーズという断崖があります。標高6,239m、これは東京スカイツリー約10本分の高さに相当するものです。
この断崖への登頂に単独挑戦し、27日目に成功した南裏健康(みなみうらたけやす)さんという著名な登山家がいます。最近始めたリードクライミングでは、日本のフリークライミングの先駆者でもあるこの南裏先生に教えていただいています。
南裏先生のお話には、命を落とさないための知恵と思慮深さ、そして自然への畏敬の念が込められています。 「人は無理をしてしまうもの。命を落とさないために、客観的な指標を決めて、
“こうなったらもう進まない。今日はやめておく”
そういうことが必要なんだと思うよ。 例えば埼玉から(パラグライダーで空を)飛ぶためにきた友人。 サングラスを忘れてきたんだよ。それで、今日はちょっと疲れてるからやめとくっていうんだよ。 僕もなにを探していたか分からなくなるときがある。そんなときはやめとこうって思うんだよね。 岩場で、ここにかけたデバイスは絶対大丈夫だけど、あそこにかけたのは外れるかもしれない、そういう判断をしながら登ってるんだ。
判断がつかないときは、登ることそのものをやめといたほうがいいんだよ」

フットケアや手術においても、同じことがいえるのではないでしょうか。
“今日はやめておいたほうがいい” “この足は危険な気がする”
そのような感性は、場合によっては攻める勇気よりはるかに大切で、患者さんの足や命を守ることにつながります。
「どのような状況で立ち止まるべきか」
自分自身や組織の中でその指標を決めておくことは、決して無駄ではないといえるでしょう。
著名な登山家(登山家ガイド.comより) https://tozan-guide.com/technique/1580 南浦クライミングスクール(SWEN三島店) http://www.casa-swen.com/swen/climbing/index.htm
日本の登山界においても、1980年〜2000年にかけて登山ブームとなり、多くのクライマーが、ヒマラヤの8000m峰や、各大陸の最も高い山の冬季登頂へチャレンジしました。しかし、結果として多くの人が帰らぬ人となりました。当時の登山は、高額な資金を必要としたため、危険を察知しても撤退するという勇気よりも、ここで諦めれば二度と来られないとか、スポンサーへの気遣いによって、多くの悲劇が埋めれました。
今の登山は、ヨーロッパで行われているアルパインスタイルが主流となり、少数メンバーで
アッタクするようになりました。さらに、危険を察知すれば突っ込まない、撤退するという判断も多くされています。勇気とは、ただ単に前進することではなく、冷静に、客観的に物事を判断し、実行することだと思います。
「直感」は過たない、過つのは「判断」である、とか…
現実的には、虚栄心とか、慢心とか、いろいろな理由で失敗します。「賢者はいつも同じ事を言い、愚者はいつもその逆をする」(ショーペンハウエル)「引き返す勇気」はとても大事ですが、とても難しい行動規範です。